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ある二人の婚活物語(STORY)。─ 第3章 第2節 ─

 

 敬子さんから誘われるのは初めてのことだった。2人で会う時はいつも僕から連絡をしていたので、少し驚いた。来週金曜の夜だ。せっかくなので少し雰囲気の良い落ち着いた店が良いだろうか。女性に食事の店を探してもらうのは何だか男らしくない気がして、食事に行く店は僕が決めることにした。

 

 約束の日。ビルの高層階にある雰囲気の良いダイニングレストランを予約していたので、装いは普段よりも少しフォーマルな雰囲気を意識した。敬子さんはまだ到着していないようなので先に席へ着く。

 

 そろそろ2人が出会って3ヶ月が経とうとしていた。結婚相談所から聞いていた話によると、平均3ヶ月程度でお相手の方との今後について意思を固めるようだ。僕自身はこのまま敬子さんと結婚を前提にお付き合いを進めていきたいと考えている。そして今日はそのことを敬子さんに直接告げようとも思っているのだ。今日まで何度もデートはしているし、そして何より一緒にいると落ち着く。

 

 少し経って、敬子さんも店に到着した。上品な黒のワンピース、髪型はアップにしていて普段とは少し違う雰囲気だ。「素敵ですね。」と僕が声を掛けると、彼女は少し照れた表情で「ありがとうございます。」と応えた。

 

 コース料理が次々と運ばれてきて僕たちは会話と食事を楽しんだ。メインの肉料理を食べ終える頃、僕は今日1番伝えたかった話をすることにした。

 

「あの、僕は敬子さんとこれからもこんな風に過ごしていけたらと思っています。よかったら結婚を前提にお付き合いしてもらえませんか?」

 

 フォークとナイフを両手に持ったまま、敬子さんは驚いた表情で顔を上げた。今日食事に誘ってくれたのも、敬子さんにとっては大きな意味は無いのかもしれない。タイミング的にまだ早いと思われる可能性もあるだろう。それでも今日どうしても伝えたかったのだ。僕は不安に押しつぶされそうになりながら、敬子さんの口が次の言葉を発するのを待った。

 

─ 第3章 第2節 ─