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ある二人の婚活物語(STORY)。─ プロローグ ─

 

ナチュラルな出会いから始まる、ある二人の婚活物語(STORY)。

 

 ───ゆっくりと時を刻む休日の街並み、西陽を受けて長く伸びる影。いつもとは違う街の表情に、少し戸惑いな

がら、足早に歩く最寄り駅までの道。しばらくぶりに締めた白いネクタイを指で軽く解きながら「それにしても、圭佑のやつ良い顔してたなぁ。」後輩の結婚披露宴に出席した帰り道、仕事場ではこれまで見ることのなかった、後輩の自信に満ち溢れた、晴れがましい姿を思いだしながら、賢司はひとりつぶやいた。
 

 ───街路灯の等間隔の明かりが、次第に灯り始める夕暮れ時。短大時代からの友人純子からの、強引な合コンへの誘いを断りきれず、待ち合わせに選んだ最近よく利用しているレトロな喫茶店。カラン、コロン。「ごめんごめん、おまたせ。」まるで、止まっていた時が再び動き出す合図のように、店内に響き渡る声。半分ほど読み進んでしまった小説から、ゆっくりと顔を上げ「私も、少し前に着いたところ。」と軽く微笑みながら、敬子は答えた。

 

 「あ、そろそろ時間。待ち合わせのお店に行こうよ。」まだ約束の時間には少し間があるのだが、純子ののんびり屋さんな性格を熟知している敬子は、急かすように言った。「え、もう行くの、まだ飲み終わってないのに。敬子はさ、昔っから時間だけは正確だよね。あの時だってさ・・・」あれこれと文句を言う純子を軽くいなしながら、会計を済ませ、昭和の雰囲気漂うレトロな喫茶店の少しだけ重いドアに、敬子は手をかけた。

 

 ───カラン、コロン。「そうだ、少し寄っていこうかな。」さしたる用事もなく、家路を急いでいた賢司は、思いたったように向きを変え、レトロな喫茶店の重いドアを引いたのだった。休日のオフィス街ということもあり店内にはサラリーマンが一組だけ。「いらっしゃい、あら休日出勤、珍しいわね。」とママの声。流行りのカフェとは違う昭和チックな雰囲気の喫茶店で、夕方からはお酒が飲めるお気に入りの店だ。いつもの席に着くなり「ふう」と大きく息を吐き、「とりあえず、ビール。」と屈託のない笑顔で、賢司はママに言った。

 

─ プロローグ ─