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ある二人の婚活物語(STORY)。─ エピローグ ─

 

 クリスマスにめでたく婚約した僕たちは数日後、ある扉の前に立っていた。

「僕たちの出会いはここで始まったんだよな・・・」目線の先には見慣れたロゴの看板。フリースタイル結婚相談所だ。

 

 コン、コン、コンッ。手慣れた手つきでノックをすると代表カウンセラーの佐藤さんがいつもの笑顔で出迎えてくれた。今日は二人で婚約の報告に訪れたのだ。 「今日は佐藤さんにご報告がありまして。実は先日、宮下敬子さんと婚約致しました。」そう言うと佐藤さんは少し驚いた表情で、すぐに「おめでとうございます!!」と祝福の言葉をくれた。少しの間談笑したあと、「婚約後の細かな手続きはこちらで対応しておきますので。また何かお役に立てることがあればいつでもご相談にいらしてください。どうぞ末長くお幸せに!」と佐藤さんは締め括り、僕らは軽やかな足取りで相談所を後にした。

 

相談所を出た後、メガネをかけた30代前半くらいのスーツの男性が結婚相談所に入っていく音が背後から聞こえた。

 

 

 ───フリースタイル結婚相談所を訪れてから数日後、私たちはブライダルフェアに参加していた。ブライダルフェアには若いカップルや子連れの夫婦、中には友人と参加している女性グループなど様々な来場者たちがいた。女性グループの一人が「あ〜やっぱり結婚っていいなぁ。彩はもう少しで入籍するんだもんね。私も早くいい人見つけたいなぁ」と話すのが聞こえた。結婚を控える友人の付き添いだろうか。私も数ヶ月前まで同じようなことを話していた気がする。なんだか懐かしいなぁという気持ちとともに、今の幸せがあるのはやはり結婚相談所のおかげなのだろうな、としみじみ感じた。これから近い未来、両家の顔合わせや結婚式、新婚旅行には以前から話していたハワイへ。たまに喧嘩はするかもしれないけれど、いずれ子どもが生まれて穏やかな家庭を築いていくのだろうか・・・。私は今のこの幸せを噛み締めながら、将来の自分の姿を見据えていた。

 

ドサッ!ガシャーン! 

 氷が床に散らばるような音がした。驚いて振り返ると、賢司くんがドリンクを盛大にこぼしている姿が目に入った。私はすぐにポケットからハンカチを取り出し、慌てふためいている賢司くんの元に駆けつけた。

 

 「もー、何やってるの。」

 

そう声をかけた時だった。私は不意にいつか見た、カフェでスムージーをひっくり返していた男性の姿が思い浮かんだ。

そして、今の彼の姿と重ねてクスリと笑ったのだった。

  

─ エピローグ ─