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ある二人の婚活物語(STORY)。─ 第3章 第1節 ─

 

 水族館デートをしたあとも何度か2人きりで色々な場所へ出掛けることができた。そして会うたびに彼女の印象は良くなるばかりだった。結婚相談所から勧められ、他の女性とデートをする機会も何度かあったのだが、頭のどこかでいつも宮下さんのことを考えてしまっている自分がいた。

 

 会う回数を重ねる中で、宮下さんとはお互いの結婚観についてや、将来の展望などについて深い話をすることができた。彼女の未来図には僕の存在も少しはあるのだろうか。仕事を終えて自宅へ向かう途中にそんなことを考えていると、何だか身体の調子が良くないことに気が付いた。全身から寒気がする。相当仕事での疲れが溜まっているのだろうか。とりあえず今日は早めに寝るとしよう・・・。

 

 ───水族館のデートの後から、田川さんとは頻繁にメールでのやり取りをするようになっていた。とはいっても仕事後の時間帯に「お疲れ様です。今日どんな1日でしたか?」などの他愛もない内容なのだけれど。そんなやり取りが気軽にできる関係性に今は心地よさを感じている。彼のメールの文章からは会って話す時と同じように端々から優しさが滲み出ている。しかしここ2日間ほど、田川さんからの連絡が一切無い。思い切って私からメールを送信してみることにした。

 

「お疲れ様です。今日はとても暑い日でしたね」

 

 送信してみたはいいが、数時間経っても返事が無い。翌朝には返事がくるかと思ったが、朝になっても受信BOXは空っぽなままだ。そして昼になっても、また夜が明けても、また次の朝を迎えても。彼からの返信は無かった。さすがに少し心配になってきた。まさか事故にでもあったのだろうか。一度心配すると悪い想像ばかり浮かんでしまうのは私の悪い癖だ。ただ単に私に興味が無くなっただけという可能性もあるが・・・。とにかく心配だ。

 

 4日が過ぎた頃、ようやくスマホ鳴り田川さんから1通のメールが届いた。「メールの返事が遅くなりすみません。酷い風邪で体調を崩しており寝込んでいました・・・。もうすっかり元気です!」

 

 話を聞くと、もう辛い症状は一切ないとのことでほっと胸を撫で下ろした。しかし、こんなに心配をしてしまうなんて。改めて彼をとても大事に思っている自分がいることに気付く。ふと思い立ち、今度は私の方からデートに誘ってみることにした。

 

「来週、お時間があれば食事でも行きませんか?」

 

─ 第3章 第1節 ─